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クラナッハ  三位一体と死んだ男 →死ぬ男


ルーカス・クラナッハ(父) Lucas Cranach der Ältere

死んだ男 死ぬ男 (morte di un uomo) 1518

「三位一体と死んだ男死ぬ男の魂を救済するための祈り」ライプツィヒ造形美術館


まずはルーカス・クラナッハ 父と子の記事リンクから

クラナッハ(父)の聖女たち

クラナッハ メランコリア 七つの大罪
この記事面白かった。四体液説より七つの大罪からあわせてみたり、作品中に描かれているパリスの審判の黄金の林檎の発見などが記事になっている。

記事 ルーカス・クラーナハ ユディト&サロメ

記事 ルーカス・クラナッハ 七つの「パリスの審判」

クラナッハ ルクレティア Lucretia by Lucas Cranach the Elder‎

クラナッハ 3枚の三美神 The Three Graces by Lucas Cranach

記事 クラナッハ ダビデとバテシバ ピカソのリトグラフ

記事 クラナッハの三位一体 Trinity by Lucas Cranach the Elder

記事 クラナッハ(子) Cranach the Younger  神話画 寓意画編

記事読んだ、余計なお世話ありがとう!
2月3週目新記事 クラナッハ(子)  最後の晩餐の自画像  Last Supper by Cranach the Younger

記事 クラナッハの聖母子 Madonna and Child by Lucas Cranach the Elder

プリンセス・ジビュレ クラナッハのジビュレ・フォン・クレーフェ姫の肖像

まだアップしていない作品があるので随時更新

記事 ルーカス・クラナッハ(父) 祭壇画 Altar by Lucas Cranach der Altere

クラナッハの「支払い」、「娼婦に遊ばれる老人」、「フィリスとアリストテレス」、「不釣合いなカップル」、「ロトと娘たち」はこちら

記事 クラナッハ(父)、クラナッハ(子) 不釣合いな恋人 Cranach I & Crana II

記事 ルーカス・クラナッハ 父 アダムとエヴァ(アダムとイヴ) Adam and Eve by Lucas Cranach the Elder

記事 ルーカス・クラナッハ(父)、ルーカス・クラナッハ(子) キリストと姦淫の女 Cranach I and Cranach II

記事 ルーカス・クラナッハ(子)+(父) Lucas Cranach the Younger +Elder 宗教画と肖像画編

2月3週目新記事 クラナッハ(父) 3枚の洗礼者聖ヨハネと幼子キリスト  The Infant Christ and Saint John the Baptist by Cranach


クラナッハのヴィーナスとクピド(ヴィーナスとアモル)編

記事 プラトン 「饗宴」 アプロディーテーの裏話

記事 クラナッハとハンス・バルドゥング ヴィーナスとアモル クレラー・ミュラー美術館

記事 ルーカス・クラナッハ(父) ヴィーナスとクピド(ヴィーナスとアモル) ピカソのリトグラフ


番外編

記事 ドガが描いたジェームス・ティソと室内にかかるクラナッハの絵


まだ記事未完成。→いま勤しんでいます。


めちゃめちゃイケてる魔物。キャラクターっぽい。この魔物は地獄からの使いでしょ。ぽっかり口を開けているのは地獄の入り口。その口の中に死者を連れて行く魔物。その足元にも一匹の魔物が碑文を示している。

これは典型的なキリスト教の儀式の一場面。

クラナッハの多くの作品には、宗教改革で有名なルターのアリストテレス嫌いと、そのアリストテレスを信望していたトマス・アクィナスへの批判を込めていたとaleiの記事にある。

記事 クラナッハ(父)、クラナッハ(子) 不釣合いな恋人 Cranach I & Crana II

そういえば、この作品も僕が別ブログで、ベノッツォ・ゴッツォリ(Benozzo Gozzoli)の「トマス・アクィナスの勝利」(1471)をアップしたけど、構図がそっくり。



めちゃめちゃ似てるって思うのは僕だけ?→記事 ベノッツォ・ゴッツォリ Benozzo Gozzoli


まずは一番上のキリストがトマス・アクィナスの著作を承認している図とクラナッハの描いた聖母子と祈る人々、そして中央の聖トマス・アクィナスと左右にアリストテレスプラトンの図には、クラナッハはキリストの三位一体。そして一番下の教会分離派(東方賢者とするアヴェロエス)が打ち倒されている図には、クラナッハ死んだ男 死ぬ男とその魂を救済する図を描いた。

この「死んだ男 死ぬ男」って?誰?



「死んだ男」と訳しちゃったのがまずかった。「死ぬ男」だ。遺言者の口述を公証人が筆記している図。

キリスト像の十字架を手にした司祭。これは臨終の前の懺悔だ。そういえば過去にピエトロ・ロンギ(Pietro Longhi)の七つの秘蹟(I Sette Sacramenti)という記事を書いたことがある。七枚の作品の最後が「病者の塗油」だった。

記事 ピエトロ・ロンギ Pietro Longhi 七つの秘蹟(I Sette Sacramenti)

つまり聖別の油「終油」で魂の回復をしているところ?

この記事未完成。もう眠いのと面倒になったのとで、続きは明日以降。あしからず。

というわけで、明日になったのでまた記事の続き。



死が迎えに来ているこの男。ということで、天使と闘争する三匹の魔物(悪魔?)たちはそれぞれにカードを手にしている。

天使は「後悔、罪の赦しを祈り、慈悲を望む」と訴え、この三匹は「死ぬ男」の少年時代、青年時代、壮年時代の罪を書き込んだカードで対抗しているんだ。

きっと作品の制作年から考えると、僕のブログでアップした記事にも書いたけど「贖宥状を購入してコインが箱にチャリンと音を立てて入ると霊魂が天国へ飛び上がる」(引用 贖宥状 wiki)その贖宥状を揶揄した作品だと思った。



左側には「我々への神の救い」と書かれている下に、聖アンナをはじめとする諸聖人と聖母の戴冠を描き、右側には聖ヨハネと使途たち。「子羊の救い主」と書かれている?

中央にはイザヤ書6-3にある聖句「SANCTUS DOMINUS DEUS SABA」が左右上下に書き込まれている。

And one called to another and said  "Holy, holy, holy is the Lord of hosts the whole earth is full of his glory!" (互いに呼びかわして言っていた。「聖なる、聖なる、聖なる、万軍の主なる神。その栄光は全地に満つ。」)

SANCTUS DOMINUS DEUS SABA は英訳すると「Holy, holy, holy is the Lord of hosts」にあたる。

この恵みの椅子(chair of grace)は、三位一体の図像における「老人の姿の父、キリスト、鳩または火の姿で表される聖霊」をクラナッハは描いているけれど、キリストの膝には子羊も描かれている。

三位一体について→記事 ダリ 世界教会会議  〜もうカウントダウン



"Patri Optimo Henricus Schmitburg Lipsensis Iurium Doctor fieri fecit Anno ab Incarnatione MDXVIII "

?「ライプツィヒのへリンクス・シュミットベルクの敬虔な仕事は、神学者と教会律法について1518年に行われた。」?

"MISERACIONES SUPER OMNIA OPERA EIUS. PSALMO 144"と書かれたアーチには聖母子。詩篇145編9節にある「主はすべてのものに慈しみ深く、その憐れみは、造られたすべてのものの上にある」と書かれている。

1517年、ルター(Martin Luther)はヴィッテンベルク城教会の門扉に、ラテン語で「95箇条の提題」を掲げた。贖宥状に対する抗議。ライプツィヒでも出版され、1518年には教皇の権威を否定する。これが権威主義を屈服させた説話でクラナッハの「フィリスとアリストテレス」、そして「不似合いなカップル」でも揶揄していると思われる。

またまたこの記事
記事 クラナッハ(父)、クラナッハ(子) 不釣合いな恋人 Cranach I & Crana II


この一番上の場面は、アリア信仰ではないかと思う。ザクセンの礼拝堂の鐘を鳴らす男。そして信仰する人々。

この作品は、ルターの宗教改革を投影して鑑賞するととっても僕的に関心が高まった。